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マッド・ガンズ

性暴力反対 · 映画

マッド・ガンズ

原題The Keeping Room

南北戦争末期のジョージア州。出征した男性たちが不在の農場を守る3人の女性が、北軍のならず者兵士たちの襲撃に立ち向かう。西部の伝統的なジャンルを女性の視点から解体し、自衛権、人種、そして極限状態での連帯を描いた衝撃の修正主義ウエスタン。

監督
ダニエル・バーバー
2014
地域
アメリカ
上映時間
95分

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ダニエル・バーバー監督による『マッド・ガンズ』(原題: The Keeping Room, 2014年)は、伝統的に男性的な征服と冒険の物語であった西部劇というジャンルを、周縁化されてきた女性たちの生存闘争の視点から鮮烈に塗り替えた修正主義ウエスタンの野心作です。南北戦争末期のジョージア州を舞台に、不在の父や夫に代わって荒廃した農場を守る姉妹オーガスタ(ブリット・マーリング)とルイーズ(ヘイリー・スタインフェルド)、そして黒人奴隷の女性マッド(ムナ・オタル)が、軍を離脱した凶悪な斥候兵たちの襲撃に直面します。本作は、歴史的な激動期において女性の身体がいかに戦場の一部と化すかを直視しつつ、自らの尊厳と家、そして生命を守るために彼女たちが「能動的な戦士」へと変貌していく過程を冷徹に描き出しています。

本作のフェミニズム的な核心は、極限状態における「インターセクショナル(交差的)な連帯」の可能性を模索している点にあります。白人姉妹とマッドの間には、当初、奴隷制という残酷な階級の壁が存在していましたが、侵略者による組織的な性暴力の脅威にさらされる中で、その関係性は根底から再構築されます。門外の男たちが、崩壊しつつある家父長的秩序が生み出した無秩序な暴力を体現しているのに対し、屋内の女性たちは、法や人種を超えた「生存のための同盟」を組むことを余儀なくされます。この力学の反転は、ジェンダーに基づく脆弱性が、皮肉にもシステムとしての障壁を打ち破る触媒となり得ることを示唆しています。監督は、荒涼とした風景と閉塞的な室内を対比させることで、逃げ場のない孤独感と、連帯だけが唯一の希望であるという切迫感を見事に演出しています。

映画的手法において、本作は西部劇にありがちな暴力の美化を徹底して避けています。武器を手に取る行為は、決して高揚感を伴う「英雄的」な決断ではなく、耐え難いトラウマを予感させる呪わしい義務として描かれます。オーガスタが守護者へと変貌していく原動力は、征服の快感ではなく、絶望的な状況下での冷徹な生存への決意です。また、対話を最小限に抑え、静寂に満ちた音響設計を用いることで、法が霧散した「無男の地(ノーマンズランド)」で生きる女性たちの張り詰めた心理状態を表現しています。結末において、彼女たちは自らの手で生を勝ち取りますが、映画は安易なカタルシスを拒絶します。生き残ったとしても、戦争の傷跡と社会的な不平等は依然として残り続けることを暗示しており、『マッド・ガンズ』は単なるリベンジ映画を超え、自衛権という基本的人権と、家庭内こそが社会闘争の最前線であるという事実を突きつける、力強いフェミニズムの宣言となっています。

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