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逮捕された正義:黒人女性、暴力、アメリカの監獄国家

ブラックフェミニズム · 書物

逮捕された正義:黒人女性、暴力、アメリカの監獄国家

原題Arrested Justice: Black Women, Violence, and America’s Prison Nation

著者Beth E. Richie

逮捕された正義:黒人女性、暴力、アメリカの監獄国家は、処罰、ジェンダー、人種、コミュニティの安全を結びつけ、FemRes の廃止フェミニズムと変革的正義の基礎資料を補強する。

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書評と読書案内

『Arrested Justice』が問うのは、黒人女性がどれほど多くの暴力を受けるかだけではない。アメリカの「監獄国家」が、どの暴力を可視化し、どの被害者を保護に値するとみなし、助けを求めた誰をかえって刑事制度へ取り込むのかを問う。ベス・E・リッチは二十年以上にわたる反暴力研究と運動の経験から、貧困地域における殴打、レイプ、ストーキング、近親姦、セクシュアル・ハラスメントを、厳罰政策、福祉削減、人種化された警察活動、大量収監に結びつける。黒人女性は国家から保護されないと同時に過剰に処罰される。それは二つの別々の失敗ではなく、一つの政治秩序が生む表裏なのである。

本書はまず、アメリカの反暴力運動が急進的な社会批判から制度の主流へ移行した歴史をたどる。シェルター、レイプ危機センター、DV法制は重要な勝利だった。しかし政府の承認、刑事訴追、重罰化が成功の中心尺度になるにつれ、家父長制、資本主義、人種主義、異性愛規範を一体として批判する視野は狭まった。「主流を勝ち取ったが、運動を失った」という逆説の中で、公的な被害者像に適合する人はサービスを得る一方、貧しい黒人女性の複雑な状況は文脈を奪われ、非協力的、信用できない、犯罪リスクがあると再分類された。

最大の分析道具は「男性暴力のマトリックス」である。そこに含まれるのは親密なパートナーによる身体的暴力だけではなく、地域社会における性的搾取や羞恥、さらに警察、裁判所、監獄、福祉機関が与える感情的・経済的・身体的損害である。個人、コミュニティ、国家の三層は並列ではなく相互に強化し合う。女性がパートナーから逃れるため警察を呼びながら、正当防衛、薬物、親権、貧困に結びつく行為によって犯罪化されることもある。こうして「無垢な被害者/危険な犯罪者」という二分法は崩れ、一人の人間がサバイバー、ケア提供者、被告人を同時に生きる現実が見える。

リッチの方法は黒人フェミニズム理論、政策史、当事者の証言を組み合わせる。公的記憶から消えた事例は感情を高める挿話ではなく、制度の分類を検証する証拠である。通報、起訴、シェルター利用だけを数えれば、警察への不信、子どもを失う恐怖、パートナーが人種差別的に処罰される懸念、自分自身が逮捕される危険から制度を避ける人々は消える。周縁から知識を組み立てることで、ジェンダー中立を装う政策が隠す権力関係が現れ、何を「信用できる暴力」と認めるかそのものがフェミニズムの争点になる。

したがって監禁フェミニズムへの批判は、暴力を放置せよという主張ではない。警察、検察、監獄を既定の回答にする発想を批判しているのであり、それらは脆弱な生活に国家暴力を持ち込むことがある。重い刑罰は公的な非難を表現しても、住宅、所得、医療、育児、長期的な伴走を自動的には供給しない。むしろ家族分離と地域資源の流出を深めうる。安全を測るなら、逮捕件数ではなく、介入がサバイバーの自己決定を広げ、処罰制度との強制的接触を減らしたかを問わなければならない。

同時に本書は「コミュニティ」を自然に安全な代替物として美化しない。家族や地域も男性権威を守り、告発を封じ、人種的連帯の名で黒人女性に沈黙を要求しうる。リッチが示すのは、黒人女性が主導する反暴力組織、運動を横断する連帯、物質的な支援基盤である。住宅、医療、所得、法的援助、若者支援、アカウンタビリティを安全の土台とし、親密圏の家父長的暴力と国家の人種的暴力を同時に拒む。この二重の拒否により、廃止は警察を除く一回的な措置ではなく、危機を引き受けられる社会関係を築く営みになる。

2012年刊行という境界もある。分析はアメリカの黒人コミュニティ、福祉国家の変容、「犯罪に厳しく」の政治史に深く根ざし、他の司法制度へそのまま移せない。事例と政策環境も、Say Her Name、黒人トランスの組織化、2020年以後の廃止運動によって更新する必要がある。黒人女性を中心に置く強みゆえに、先住民、移民、障害者、トランスジェンダーの経験には別の研究を補うべき部分もある。だがこの境界はマトリックスを弱めるのではなく、各地域で暴力の層を組み直す必要を教える。

読む際は、反暴力運動の主流化、私的な傷と国家統治を結ぶ暴力マトリックス、そして終章の黒人フェミニズム的戦略という三本の線を追うとよい。次に『Invisible No More』で警察暴力のジェンダー化を確認し、『The Color of Violence』と『Abolition. Feminism. Now.』で有色女性の運動史へ広げたい。FemRes にとって本書の永続的価値は反監禁の標語ではなく判断の道具にある。女性の安全を掲げる政策はすべて、誰の生活資源を増やし、誰を処罰へ近づけるのかを明らかにしなければならない。

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