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石油ではなく土壌を

気候正義 · 書物

石油ではなく土壌を

原題Soil Not Oil

著者Vandana Shiva

工業農業、化石燃料依存、気候危機を結び、小農、種子多様性、食料主権を中心に置く。

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書評と読書案内

『Soil Not Oil』は、気候政策が別々に扱いがちな三つの危機から出発する。気候変動、エネルギー不安、食料不安は、同じ工業的な発展モデルが生んだものだと Vandana Shiva は論じる。化学肥料と農薬の製造、機械化農業、長距離輸送、冷蔵・加工、世界的な供給網をつなぎ直すと、現代農業は石油を消費するだけでなく、石油経済の論理に従って土地を組織していることが見える。標準化、規模、短期収量を優先し、土壌劣化、農民の負債、無償のケア、コミュニティの自律性喪失を外部費用にする。Shiva が批判するのは一つの燃料ではなく、生命の条件を投入物に還元する経済的想像力である。

題名の「土壌」は、石油の代替資源という意味にとどまらない。Shiva は土壌を、微生物、水、植物、動物、人間の労働が共同で維持する生きたコモンズとして捉える。土壌は炭素を蓄えるだけでなく、干ばつ、洪水、価格変動に地域が耐える力も蓄える。工業農業が土壌を購入した化学資材の受け皿となる不活性な表面として扱うのに対し、生態学的農業は肥沃さが一回限りの投入ではなく、長期的な関係から生まれることを認める。この違いは気候政策の評価軸を変える。ある技術が排出量を減らしても、土地の支配と移行リスクの分配を問わなければ、「グリーン」の名で収奪を続けることができる。

種子主権は議論のもう一つの柱である。モノカルチャー、特許種子、それと結びついた化学資材は、農民を繰り返し購入する生産循環へ組み込み、何世代もかけて種を選び、保存し、地域の気候に適応させてきた知識の正統性を奪う。Shiva にとって生物多様性の保全は、知識と生存をめぐる権利要求である。何を育て、何を残し、誰と交換するかを決められることは、コミュニティが食の未来をある程度統御できることを意味する。種子銀行、地域市場、農民の知識ネットワークは、懐古的な遺物ではなく、企業集中と気候の不確実性に抗するインフラとして描かれる。

フェミニズム上の争点は、主流経済学が見落とすこれらのインフラに現れる。多くの農村女性は種の保存、水汲み、食事の供給、食品加工、コミュニティ関係の維持を担う一方、正式な土地所有権、信用、農業政策での発言権を持たない。産業化は彼女たちの安価な労働を利用し、土地が劣化し公共サービスが後退すれば、回復費用を家庭へ押し戻す。Shiva はこうして生態正義を社会的再生産と結びつける。環境危機がジェンダー化されるのは、女性が自然に地球へ近いからではなく、財産、資源、ケア責任が不平等に配分されているからである。

この分析は「気候解決策」の尺度も広げる。高効率の機械、炭素市場、国境を越えるオフセットに希望を集中させるのではなく、多様な農業、健全な土壌、短い食料連鎖、農民の決定権が、緩和、適応、民主的統治を同時に支えうると Shiva は主張する。一食の食事は、土地政策、労働制度、貿易規則、公衆衛生が交わる場所になる。これはエコフェミニズムにとって重要な貢献である。ケアは倫理的態度だけでなく、経済が依存する生命を持続させられるかどうかを測る物質的基準となる。

明快で動員力のある大きな物語は本書の強みだが、同時に限界でもある。Shiva は「工業的」「グローバル」と「地域的」「伝統的」を整然と対置しすぎることがあり、小規模農業の内部にも地主支配、カースト階層、ジェンダー暴力、過酷な労働があることを過小評価しうる。地域知は自動的に平等ではなく、小農への回帰だけで収量、所得、栄養、労働保護が解決するわけでもない。女性を地球の生来的守護者として描けば、制度によって押しつけられたケア責任を本質化し、男性、市場、国家に分担を要求しない危険もある。

したがって本書は、すべての農業政策を網羅する実証評価ではなく、力強い政治生態学の論綱として読むのがよい。アグロエコロジー研究、農業労働者の組織化、Dalit と先住民女性の土地闘争、土地保有、機械化、労働、収量についての地域資料と組み合わせる必要がある。そうすれば、企業支配と化石燃料依存への Shiva の重要な批判を保ちながら、「地域化」が実際には誰に資源、休息、権限を返すのかを検証できる。

FemRes の読者にとって最も有用なのは、有機食品がより良いかという孤立した消費選択ではない。種子と土地を誰が所有し、農業知識の基準を誰が決め、気候適応の無償労働を誰が担い、グリーン移行から誰が利益を得るのかを問うことだ。本書は気候正義、食料主権、脱植民地政治、社会的再生産を同じ地図に置く。石油から土壌へ本当に移るとは、エネルギー源を取り替えるだけでなく、権力を組み替えることなのだと教えている。

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