
職場の平等 · 映画
9 to 5
セクハラ上司に立ち向かう3人の女性社員の反撃を描いた、80年代を代表する痛快な職場リベンジ・コメディ。ジェーン・フォンダ、リリー・トムリン、ドリー・パートンという豪華キャストが集結し、当時のオフィスに蔓延していた性差別や賃金格差、嫌がらせといった深刻な問題を、ユーモアたっぷりに、かつ鋭く描き出したフェミニズム映画の古典的名作です。
- 監督
- コリン・ヒギンズ
- 年
- 1980
- 地域
- アメリカ
- 上映時間
- 110分
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コリン・ヒギンスの『9時から5時まで』(1980年)は、単なるドタバタ喜劇の枠を超え、職場の女性たちが直面する構造的な不平等を鋭く突いた、ハリウッド史上に残る「フェミニズム・エンターテインメント」の金字塔です。主演の一人であるジェーン・フォンダの提案から始まった本作は、現実の働く女性の権利団体「9 to 5」の創設者カレン・ナスバウムとの対話に着想を得ています。このリアルな社会運動を背景に持つことで、映画は単なる復讐劇ではなく、働く女性たちの切実な叫びをポップに昇華させた「労働宣言」となりました。物語は、離婚を経て自立を目指す新人ジュディ(ジェーン・フォンダ)、実力がありながら男性の後輩に昇進を阻まれ続けるベテランのバイオレット(リリー・トムリン)、そして上司のセクハラの標的となり周囲から誤解されているドラリー(ドリー・パートン)という、異なる世代と立場にある3人の連帯を描いています。
映画の中でも特に象徴的で批評的な意味を持つのが、彼女たちが上司フランク・ハート(ダブニー・コールマン)への復讐を妄想するファンタジー・シーケンスです。ここでは、日頃抑圧されている女性たちの怒りが、ウェスタン風や狩猟風の演出でユーモラスに爆発します。上司のハートは単なる個人としてではなく、1980年代の米国の企業文化が称揚していた「性差別主義、独善的、偽善的」な権力構造そのものの擬人化として描かれています。彼女たちが偶然から彼を軟禁し、一時的にオフィスを「乗っ取って」実施した改革——同一賃金、社内保育所の設置、フレックスタイム制、オフィスの緑化などは、現代では当たり前とされるものも多いですが、当時は驚くほど過激で先見明示的なものでした。
カントリー界のスーパースター、ドリー・パートンが書き下ろし、自ら歌い上げた主題歌「9 to 5」のパワーも特筆すべきものです。打字機の音を模したパーカッシブなリズムと、「ベッドから這い出し、キッチンへふらつきながら行く……」という労働者の日常を歌った歌詞は、この映画を単なる物語から世界的な労働運動のアンセムへと押し上げました。パートン演じるドラリーは、「セクシーで頭が空っぽ」というステレオタイプを内側から破壊し、上司には客体化され、同僚からは孤立させられている女性の孤独を鮮明に映し出し、女性同士の共感と連帯の重要性を説いています。
公開から数十年経った今でも、『9時から5時まで』が色褪せないのは、ここで扱われている「ジェンダー間の賃金格差」や「セクシュアル・ハラスメント」といった問題が、現代社会においても未だ解消しきれていないからです。本作は、たった一人の「悪いリンゴ」を取り除く物語に見えながら、実はそのようなリンゴを育む構造そのものを問い直しています。映画の本当の功績は、社会を変える原動力を「一人の英雄」ではなく「女性たちの連帯(シスターフッド)」に求めた点にあります。格差やハラスメントに直面したとき、女性たちが個々で耐えるのではなく、共に声を上げ、知恵を出し合うことで職場環境を根底から変えられるというメッセージは、時代を超えて働くすべての人々に勇気を与え続けています。
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