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インビジブル・ウィメン:男社会のデータ・バイアス

女性の権利 · 書物

インビジブル・ウィメン:男社会のデータ・バイアス

原題Invisible Women: Data Bias in a World Designed for Men

著者キャロライン・クリアド=ペレス

世界がいかにして男性を「デフォルト(標準)」として設計され、女性のデータが無視され続けてきたかを暴き出した衝撃の調査。医療、テクノロジー、都市計画、経済に至るまで、目に見えないデータ・バイアスが女性の健康、安全、そして人生にいかに深刻な影響を及ぼしているかを解明する。

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書評と読書案内

2019年に出版されたキャロライン・クリアド=ペレスの『インビジブル・ウィメン:男社会のデータ・バイアス(Invisible Women: Data Bias in a World Designed for Men)』は、私たちの社会のあらゆる設計にいかに深遠な、しかし目に見えないジェンダー・バイアスが組み込まれているかを明らかにした、現代で最も重要かつ影響力のあるノンフィクションの一つである。著者は、都市計画から医療、自動車の安全性、そして職場の設計にいたるまで、世界がいかに「男性をデフォルト(標準)とし、女性を例外(あるいは単に考慮されない存在)」として構築されてきたかを、膨大なデータに基づき実証している。

キャロライン・クリアド=ペレスは、イギリスを拠点に活動する高く評価されたライターであり、活動家である。彼女はこれまで、イギリスの紙幣に女性(ジェーン・オースティン)を登場させるキャンペーンや、議会広場に史上初の女性像を設置させる運動を率いるなど、公共空間における女性の不可視性と戦い続けてきた。本作において彼女は、個人的な経験や感情論に頼るのではなく、冷徹なまでの事実と統計を突きつけることで、構造的な不平等の正体を暴き出している。

本書が提示する最も核となる概念は「ジェンダー・データ・ギャップ(性別によるデータの欠落)」である。古来より科学や社会設計の場において、人間といえば男性を指し、女性はその「派生形」あるいは「特殊なケース」として扱われてきた。その結果、収集されるデータの大部分は男性のものであり、女性特有のニーズ、身体的特徴、生活パターンは考慮から外されてきた。クリアド=ペレスは、このデータの欠落が単なる不便さを超え、女性の健康や生命を直接的な危険にさらしている実態を描き出す。

医療分野におけるデータ・バイアスは特に衝撃的である。心臓発作の典型的な症状として私たちが知っている多くは、実は男性のデータに基づいたものである。男性とは異なる症状を示すことが多い女性は、病院で誤診されたり、適切な処置が遅れたりする確率が男性よりもはるかに高い。また、薬品の臨床試験においても、ホルモン周期の影響を嫌うという理由で女性(や雌の実験動物)が除外されてきた歴史がある。その結果、女性は自分たちにとって適切な用量や副作用が十分に検証されていない薬を服用することを強いられているのである。

自動車の安全性もまた、長い間「デフォルトの男性」に基づき設計されてきた分野である。衝突安全テストで使用されてきたダミー人形は、長い間男性の平均的な身長と体重に基づいたものであった。女性の身体構造、特に首の強さや着座姿勢が男性とは異なることが無視されてきたため、女性が交通事故で重傷を負う確率は男性よりもはるかに高い。クリアド=ペレスは、いかに「客観的」に見える工学的な設計基準そのものが、実は男性特有の身体を前提としたものであるかを鋭く指摘している。

テクノロジーの世界においても、この不可視化は進行している。スマートフォンのサイズは平均的な男性の手の大きさに合わせて大型化しており、女性の手には操作しづらいものとなっている。音声認識ソフトウェアは、男性の声を基準に開発されているため、女性の声を正確に認識する率が低いことが多い。さらにAI(人工知能)のアルゴリズムは、過去の偏ったデータ(男性が優遇されてきた雇用データなど)を学習することで、既存の性差別を自動化し、さらに強化するというリスクを孕んでいる。

都市計画や公共交通機関の設計も例外ではない。クリアド=ペレスは、道路の除雪の優先順位がいかに男性の通勤パターン(主に郊外から中心部への直通)を優先し、女性に多い複雑な移動パターン(学校、買い物、ケア労働のための複数箇所の経由)を不利益にしているかを示す。また、公共トイレの設置数や設計が、女性の生理的なニーズやケア労働の現実を無視していることも詳述している。女性がトイレの前で長い列に並んでいるのは、単なるマナーの問題ではなく、都市設計における致命的なデータ・欠落の結果なのである。

職場環境についても、クリアド=ペレスは鋭いメスを入れている。オフィスの設定温度は、1960年代の男性の平均的な代謝率に基づいているため、女性にとっては寒すぎることが多い。また、防弾チョッキや建設現場の防護具といった個人用保護具(PPE)が男性の体型を前提に作られているため、女性の労働者をかえって危険にさらしたり、作業効率を落としたりしている。これは「女性が男性と同じように働けない」のではなく、「職場が女性を想定して作られていない」という構造的な問題なのである。

本書はまた、ケア労働という「無償労働」のデータ上の不可視化についても論じている。育児や家事、介護といった仕事は経済統計においてしばしば価値がないものとして扱われ、その結果、これらの仕事の多くを担っている女性の負担を軽減するための政策や予算が後回しにされてきた。クリアド=ペレスは、女性の無償労働を経済データの中に正しく位置づけることが、真に公平な社会を築くための前提条件であることを説く。

クリアド=ペレスの文体は、冷静でありながら、事実が積み重なるにつれて読者に強い憤りを感じさせ、同時に深い納得感を与えるものである。彼女が収集した膨大な事例は、もはや「個別のミス」として済ませることはできず、私たちのシステム全体がいかに深く男性の色眼鏡で見られているかを証明している。本書を読むことは、これまで「当たり前」だと思っていた世界のあらゆるものの見方を一変させる経験となるだろう。

『インビジブル・ウィメン』は発売以来、世界中で大きなセンセーションを巻き起こし、数多くの賞を受賞した。イギリスでは王立協会科学図書賞を受賞し、読者のみならず、デザイナー、エンジニア、医療従事者、そして政治家たちに対し、独自のバイアスを見直すよう強く促した。本書の影響を受け、いくつかの国や組織ではデータの収集方法や製品の設計基準の見直しが始まっている。

結論として、キャロライン・クリアド=ペレスの『インビジブル・ウィメン』は、より安全で、健康的で、かつ公平な世界を創るための、データに基づくマニフェストである。著者は、女性を「見える化」することは、女性を優遇することではなく、単に現実に存在する世界の半分(人口の半分)を正しく認識することに他ならないと説く。バイアスのないデータを収集し、それに基づいた設計を行うことは、女性の生活の質を向上させるだけでなく、社会全体のリスクを減らし、経済的な効率をも高めるのである。

本書が投げかける問いは、私たちの文明がいかに情報の半分を捨ててきたかという事実への告発である。この「目に見えない壁」を壊すためには、まずその壁が存在することを認識し、あらゆる分野において男女別のデータを収集することを義務付ける必要がある。クリアド=ペレスは、解決策はシンプルだが変革的であると語る。「データの半分ではなく、全体のデータに基づいて設計する。そして女性に直接問いかけ、彼女たちの存在をデフォルトに加える」ということである。本書は、そのための確固たる理論的かつ経験的な土台を提供しており、より公正な未来を目指すすべての人の必読書となっている。

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