
トランスの健康 · 書物
トランスの身体、トランスの自己
原題Trans Bodies, Trans Selves
Laura Erickson-Schroth 編。トランス・コミュニティの知を健康、法律、家族、日常生活に結びつけ、北米中心という射程の限界も示す共同執筆の資料。
書評と読書案内
Laura Erickson-Schroth が編集した Trans Bodies, Trans Selves 第2版(Oxford University Press、2022)は、トランスの人々を臨床家の専門知の対象として扱うマニュアルではなく、コミュニティのための総合的な資料である。704ページに、トランスやジェンダー規範に収まらない人々による、人種、文化、移民、障害、宗教、カミングアウト、法律、仕事、健康、親密な関係、子育て、ライフステージ、芸術、組織活動についての寄稿が集まる。その幅は、トランスの生活を単一の医療的な出来事や抽象的なアイデンティティ論争に還元せず、家族、職場、ケア制度、公的機関のなかで続く人生として捉える政治的な主張でもある。
目次は「自分らしく生きる」から健康、関係と家族、人生の段階、「私たちの力を主張する」へと展開する。この順序によって、医学は排除されない一方、トランスの知へ入る唯一の正統な入口でもなくなる。身体の自己決定とは、アイデンティティを表現することだけではない。資源にアクセスし、尊重され、制度が理解しやすい狭いジェンダー表現を演じずに必要なケアを求められることも含む。生活史、制度の条件、健康情報を関連づけながら、医学をトランスの生の全体と同一視しない構成である。
冒頭の「自分らしく生きる」では、この立場が明確に示される。Tiffany Sostar の書評が紹介する寄稿者の議論は、トランスの人々が安全、法的承認、コミュニティへの参加、必要な医療を得る前に、自分の存在を証明したり、規定されたジェンダー役割に従ったりする必要はないというものだ。共同の権利擁護も、コミュニティ内の意見の違いを消すことを条件としない。問われるのは「誰が資格を持つのか」ではなく、制度の責任である。権利の条件が外部の権威に認められる物語を語ることになるとき、中立に見える評価は、どのようなジェンダーの生を理解可能とするか選別している。
本書の多声的な形式も議論の実践となる。23章に加え、第2版には150を超える短い文章、個人の語り、調査の引用、アートや詩が収められている。少数の物語に全員を代表させるのではなく、同じ制度上の問題が人種、移民、障害、年齢、宗教、資源へのアクセスによってどう変わるかを示す。コミュニティの経験は、専門知の承認を待つだけの例ではなく、その知識を修正しうるものとして扱われる。ただし、経験を選び、配置し、どんな言葉で示すかは編集上の権力でもある。集合的な記録であっても、代表性の問題が自動的に解消するわけではない。
本書は、共有知によって医療権威に異議を唱えてきた Our Bodies, Ourselves に着想を得ている。しかし、以前の女性の健康論に一章を加えただけではない。トランスの寄稿者が問いの設定に参加することで、「女性の身体」を一つの普遍的な生物学的モデルとみなす前提が揺らぐ。フェミニズムに問われるのは、誰が身体を名づけ、誰がケアを受けられ、誰の語りが知識として信頼されるのか、ということだ。この継承は身体の違いを消すのではなく、既存のフェミニズム知識の境界をトランスの承認条件にしない。
編集者たちは、この集合的な記録が全員を代表できないことも認めている。執筆者の多くは米国またはカナダを拠点とし、白人や中・上流階級の人も多く、記録されていない声が残る。これは形式的な但し書きではなく、本書の使い方を決める限界だ。幅広いことは世界全体を網羅することではなく、医療、法律、用語の情報にも時間と地域の境界がある。普遍的な規則集ではなく、問いの地図とコミュニティの知への入口として読み、具体的な判断では地域の制度や一人ひとりの必要を確かめたい。
『トランス・メディシン』と並べて読める。本書がトランス・コミュニティによる実践知と経験の編成を示すのに対し、Stef M. Shuster の研究は臨床知とケア制度の形成を分析する。両者は異なる尺度を照らすもので、答えを置き換え合うものではない。版の情報、編集者、目次はGoogle Books の Oxford University Press 版記録で確認できる。冒頭の章、コミュニティの語り、地理的・階級的な限界については、Tiffany Sostar による International Journal of Narrative Therapy and Community Work の第2版書評を参照した。
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