
障害正義 · 書物
障害の可視性:21世紀の一人称の物語
原題Disability Visibility: First-Person Stories from the Twenty-First Century
Alice Wong 編の Disability Visibility は、現代の障害者による一人称の文章を集め、障害文化、メディア表象、身体経験、法律、芸術、日常生活を公共の視野に置く。
書評と読書案内
Disability Visibility は、現代の障害文化と disability justice への重要な入口である。Alice Wong は障害を単一の医学カテゴリーとして提示するのではなく、多様な書き手による一人称のエッセイを通じて、障害経験が人種、ジェンダー、階級、法律、芸術、親密性、メディア、日常生活を横断することを示す。
この編集方針自体が政治的である。フェミニズムや主流メディアはしばしば障害者の代わりに語り、彼らを感動物語、ケアの負担、医学的ケースへと変えてしまう。本書は語る権利を障害者自身に戻す。異なる身体、感覚、痛み、精神状態、社会的位置をもつ主体が現れ、「困難を乗り越える」単一の物語に還元されない。
FemRes の内容構成において、本書は文化的・物語的な入口を担う。Kafer と Kim Q. Hall が理論地図を示し、Piepzna-Samarasinha が運動とケアの実践を示すなら、Wong の選集は障害のある生活の広がりを公共文化のなかに置く。disability justice に初めて触れる読者にとって、障害は少数者の例外ではなく、近代社会が正常性をどう組織しているかを映す視点であることが分かる。
本書はまた、フェミニストな資源づくりが狭い意味での「障害のある女性」だけを扱えばよいわけではないことを示す。障害者は同時に黒人、アジア系、クィア、トランス、移民、芸術家、法的擁護者、ケアする人、ケアされる人でもありうる。こうした重層的な位置は、可視性を単なる「見られること」ではなく、誰が正常な生活、公共空間、未来を定義するのかという問いへ変える。
限界は選集形式にある。すべての理論的論争を体系的に展開するわけではなく、中心は米国の文脈である。しかし文化的入口としては不可欠であり、多声的な構成によって単一の障害物語に抵抗する。feminist disability studies、crip theory、ケアの政治と併読する価値が高い。
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