FemRes成長し続けるレビュー
女性と戦争

フェミニスト安全保障研究 · 書物

女性と戦争

原題Women and Wars

著者Carol Cohn

キャロル・コーン編。戦争経済、性暴力、避難、軍隊、和平交渉、戦後社会をジェンダーの視点から読み直す論集。

この資料を共有
X ↗Facebook ↗

01

書評と読書案内

キャロル・コーン編『Women and Wars: Contested Histories, Uncertain Futures』は、フェミニスト安全保障研究の論集である。中心にあるのは「戦争の中で女性は何をしたか」だけではない。戦争が、暴力、労働、国家権力、記憶をどのようなジェンダー秩序によって組織するのかという問いだ。章は概念的枠組みと戦争の政治経済から始まり、性暴力と健康、強制移住、反戦活動、国家軍と非国家武装組織に参加する女性を扱い、和平交渉、武装解除・動員解除、戦後復興へと進む。戦争を戦闘の瞬間に閉じず、前後の時期や家庭、社会に及ぶ制度過程として見る構成である。

本書の重要な分析上の姿勢は、「ジェンダー」を「女性」と同義にしないことだ。ジェンダーはアイデンティティの位置であると同時に、権力関係を組み立て、軍事、保護、犠牲、依存に意味を与える言葉でもある。軍事史に女性を追加するだけでは、武装した人を政治主体とみなし、ケア、農業、工場労働、避難、再建を背景に追いやる構図が残る。各章は、戦争を支えながら軍事史に数えられない労働は何か、国家が保護すべき人とみなされる女性と、犠牲可能な民間人・労働者・戦闘員とみなされる女性の差は何か、誰が暴力を政治的なものとして名づけられるのかを問い直す。

また女性を被害者か、生まれつきの平和の担い手かに固定しない。性暴力は特定の軍事・経済・社会条件の中で分析されるべきで、男性の本性や女性の無力さを語る普遍的な寓話にしてはならない。女性が軍隊、ナショナリズム、武装運動に参加することも、それだけで解放を意味しない。人種、階級、植民地主義の歴史、国籍、セクシュアリティ、年齢によって、脆弱性と行為の余地は異なる。こうした差異を戻すことで、制度に女性が見えるようになっただけで平等が達成されたと誤認することを防げる。

章の並び自体も読解の方法になる。同じジェンダー関係を、戦時経済、身体への被害、避難と再定住、軍事組織、和平交渉、動員解除の順に追えば、「紛争終結」の宣言後に権力関係が本当に消えたかを検討できる。たとえば和平協議に女性代表の席があっても、戦後のケアを誰が担い、誰が土地に戻れ、生計と安全を得られるのかは分からない。復興を女性が本来的に担う仕事とみなすことも避けたい。本書は制度的決定と日常生活を同時に見る必要を示し、女性の行為を認識しながら美化しない姿勢を促す。読書会では一章の労働、身体、決定権、リスクの配分を追い、別の章と比べることで、広い射程を普遍的な説明と取り違えずに読める。

幅広さは問題を組み立てる枠組みとして有効だが、論集がすべての紛争を同じ深さで扱うことはできず、2012年刊の本書はその後のドローン戦争、デジタル監視、気候移住を網羅しない。女性の戦時経験を尽くす目録ではなく、権力を追跡する問いとして読むのがよい。特に重要なのは、平和を戦闘の停止だけで測らない視点である。軍事化された制度、ケアの分業、政治的排除が戦後秩序にどう残るかまで問わなければならない。出版社の紹介と目次は、戦争の条件から戦後制度へと進む構成を示している。

読者の声

読者ノート

読後の考えや、さらに追いたい手がかりを共有してください。

ディスカッションに参加

コメント

コメントを読み込み中...

サポート

このコンテンツがお役に立ちましたら

FemResを支援