
ナショナリズム · 書物
女性・ネイション・国家
原題Woman-Nation-State
Nira Yuval-Davis と Floya Anthias 編の論集は、ナショナリズム、国家形成、家族政策、女性の政治的役割が相互に形成される過程を分析する。
書評と読書案内
Nira Yuval-Davis と Floya Anthias の編著『Woman-Nation-State』は、ジェンダーはナショナリズム研究に後から加えられる副次的な主題ではなく、民族共同体や国家が想像され、組織され、争われる仕組みの一つだと論じる。本書は、女性が民族・国民共同体のなかにどのように位置づけられ、国家権力がその生活にどう介入するかを問う。Yuval-Davis による後年のジェンダーとネーションの議論とあわせて読むと、女性には人口の生物学的再生産者、文化の守り手・伝達者、共同体の差異を示す記号、ナショナリズムをめぐる闘争の政治的行為者といった、相互に結びついた役割が割り当てられることが見えてくる。これらは自然な義務ではない。生殖、家族、セクシュアリティ、市民権、文化的な「ふさわしさ」を公的権力の問題にする政治的な割り当てである。
九つの国・社会の事例は、経験を同一視せずに比較の厚みを与える。目次は英国、オーストラリアから南アフリカ、ウガンダ、イスラエル、イラン、トルコ、キプロス、イタリアへと展開する。章題はそれぞれ異なる論点を前景化する。南アフリカのアフリカーナー・ナショナリズムとアフリカ民族会議における母性と人種、ウガンダのセクシュアリティと経済的支配、イスラエルの民族再生産と「人口競争」、そしてトルコで女性が政治的行為者なのか象徴的な駒なのか。章題だけで各章の実証的な結論を代用することはできないが、比較の意義は読み取れる。誰が国民として数えられ、どこに境界が引かれるかという問いが、植民地支配の歴史、宗教・政治構想、労働関係、国家制度によって異なる形をとるのである。
この比較は、何がフェミニストの政治課題とみなされるかを変える。国家が出生を人口、帰属、国民の存続と結びつけるとき、生殖は私的選択や医療の問題だけではなくなる。服装や家族の規範は、共同体が道徳的な連続性を主張する公的な記号になり得る。市民権法は女性を形式上包摂しながら、実際の権利を婚姻、血統、家族上の地位に条件づけることがある。その一方で、女性がナショナリズム運動に参加し、集団への帰属を政治資源として用いることもある。運動がジェンダーを規律し続ける場合でもそうだ。本書の強みはこの矛盾を一緒に捉える点にある。女性はナショナリズムに操作されるだけの象徴ではなく、その運動に参加すれば自動的に解放されるわけでもない。
ここから「伝統」対「近代」という単純な二分法も崩れる。国家は近代的だと称しながら、家族法や生殖政策で人口を管理し得る。民族運動は植民地主義的権力を批判しつつ、内部ではジェンダー規範を維持し得る。本書は、女性に民族の生物学的・文化的な継続を担わせることで誰が利益を得るのか、想像上の家族から誰が排除されるのか、女性たち自身がその役割をどう交渉し、異議を唱えるのかを問う。この視点は親密な生活と公式制度の両方に沿って権力を追うため、両者を別々の領域としないフェミニスト研究に有効である。
本書はまた、家族を通じて国民的な権力が日常化する様子を見せる。血統、婚姻、生殖の管理によって帰属が組織されるとき、国家の政策は法律にとどまらず、誰が家族をつくれるのか、どの子どもが共同体の一員と数えられるのか、誰が文化的境界を守ることを期待されるのかという親密な規範に入り込む。章ごとの異なる舞台は、「女性」を単一の政治集団として扱ってはこの問いに答えられないことを示す。共通するジェンダー化された役割が、制度と歴史によってどう変わるかを追うことが分析の課題である。
本書は基礎的な仕事である一方、1980年代末の概念語彙と選ばれた九つの社会に位置づけられる。後続のクィア/トランスの研究、入植者植民地主義、障害、移住、先住民・人種化・ディアスポラ内部の差異を扱う研究は、この枠組みを拡張し、批判できる。本書は普遍的な雛形や世界全体の地図ではなく、特定の権力作用を見えるようにする分析枠として読むのがよい。法と憲法上の権利を比較するなら『ラテンアメリカにおける女性・ジェンダー・立憲主義』、戦争や政治的暴力をめぐるジェンダー化に進むなら『グローバル紛争のジェンダー化』とあわせて読みたい。どちらも問いを異なる制度の領域へ広げる。
資料:Springer Nature の書誌・目次(対象範囲、九つの社会の目次、章題、版の情報);Nira Yuval-Davis, “Gender and nation,” Ethnic and Racial Studies(市民権、文化、起源、ジェンダー化された国民境界に関する著者の後年の説明)。
読者の声
読者ノート
読後の考えや、さらに追いたい手がかりを共有してください。
ディスカッションに参加
コメントを読み込み中...
サポート
このコンテンツがお役に立ちましたら



