女性に対する暴力 · 論考
男女間における暴力に関する調査(令和5年度)
配偶者からの身体的・心理的・経済的・性的な暴力と相談経験を読み解き、被害を数える分母や調査対象の違いを考える。
記事解析
殴られたことがあるかだけを尋ねると、金銭、交友関係、性的自己決定への統制を見落としかねない。内閣府男女共同参画局の令和5年度調査は、配偶者からの暴力を身体的暴行、心理的攻撃、経済的圧迫、性的強要という具体的な行為に分け、相談経験を別に尋ねる。2024年3月26日に公表され、公式ページでは訂正後の本文も提供されている。
百分率の前に標本を確認する
2023年11~12月に全国の18~59歳の男女5,000人を抽出して行い、有効回答は2,950人、回収率は59%だった。これは質問紙による標本調査であり、警察への届出の統計ではない。未届出の経験も回答に含まれうる一方、回答しなかった人に被害がなかったとは判断できない。
配偶者からの暴力に関する質問の分母は、結婚経験のある1,838人で、女性1,050人、男性788人である。「配偶者」には事実婚、別居中の夫婦、元配偶者も含まれる。少なくとも一つの被害経験を答えた割合は、この女性の27.5%、男性の22.0%だった。日本のすべての女性・男性に直接当てはまる比率ではなく、結婚経験という条件を省いて伝えてはならない。報告と分類表では、分母自体が結果の意味を決めている。
同じ一項目でも被害は同じではない
心理的攻撃の例には、人格を否定する暴言、電話や交友関係の細かな監視・制限、長期間の無視、脅迫がある。経済的圧迫には、生活費を渡さない、給与や貯蓄を勝手に使う、外で働くことを妨げる行為が含まれる。性的強要も一種類の身体行為に限定されない。行為を具体的に尋ねることで、家庭の事情や愛情の表現とされていた統制を、被害として認識できる。
全体の比率が近くても、男女の状況や被害の程度が同じとはいえない。同じ結婚経験者のうち、性的強要を答えた女性は10.6%、男性は1.1%だった。被害の種類は重複するため、項目ごとの百分率をそのまま足せない。「少なくとも一つ」という総合指標だけでは、深刻さ、反復性、生活への影響も説明できない。
誰かに話すことと司法手続は異なる
配偶者から被害を受けたと答えた462人のうち、52.8%が少なくとも一つの相手・機関に打ち明けたり相談したりしていた。相談先には友人、家族、専門機関が含まれ、この数字を警察への届出率と呼ぶことはできない。被害経験、他者への開示、支援への接続、正式な届出の間には、いくつもの隔たりがある。
相談しなかった理由には、相談するほどではないと思った、我慢すれば生活を続けられると思った、といった回答がある。暴力の常態化や相談の敷居を考える材料にはなるが、一つの心理的原因がすべての人の行動を決めると証明するものではない。相談しなかったことを被害者への非難につなげるより、支援が利用できる条件を問う必要がある。
年次比較や国際比較の前提
今回の抽出対象は18~59歳であり、20歳以上を対象とした以前の調査とは異なる。時系列を見るには年齢構成と質問設計の点検が欠かせない。「全国調査」という名称も、範囲外のすべての年齢や経験を代表することを意味しない。
フランスの2024年行政記録と読む際には、率の高低を直接比べるのでなく、標本調査と行政登録がそれぞれ何を捉え、何を見落とすかに注目したい。Saffiotiの論文からは別の問いが生まれる。家庭と親密さを当然の私的領域とするとき、どの統制が権利とされ、どの相談が余計な介入として退けられるのか。
別の形式で読み進める
特集をたどる
関連する特集 · 第 11 号
デジタルな暮らしを誰が決めるのか?
分類、審査、公共サービスを通じて、デジタルな仕組みを誰が決め、誰が支え、誰が参加し、異議を申し立て、拒否できるかを問う30点。
データ正義
関連する特集 · 第 06 号
処罰は私たちをより安全にするのか?
『Abolition. Feminism. Now.』を起点に、ジェンダー暴力、警察、収監、コミュニティのアカウンタビリティをたどります。国家が処罰によって安全を約束するとき、監視され、犯罪者化され、見捨てられやすいのは誰か。フェミニズムは正義を、檻を広げることではなく、サバイバーを支え、危害を止め、暴力を生む条件を変える営みとして想像できるのかを問います。
性暴力反対
読者の声
読者からの手紙
この記事への応答や、議論に加えるべき資料を共有してください。
ディスカッションに参加
コメントを読み込み中...
サポート
このコンテンツがお役に立ちましたら